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米ステーブルコイン発行者のマネー・ローンダリング対策と制裁コンプライアンスの規則案:FinCENとOFACが共同提案、未発効

2026年4月10日、米財務省傘下のFinCENとOFACが共同で提案した規則案が連邦官報(91 FR 18582)に掲載されました。本記事は連邦官報の全文、FinCENのファクトシート、財務省のプレスリリース、そして連邦官報が案件番号ごとに文書を一覧する公式の検索に基づき、規則案が決済用ステーブルコイン発行者を銀行秘密法の対象に加えようとしていること、マネー・ローンダリング対策プログラムの四つの要件、5,000ドルという疑わしい取引の報告の基準額、そしてOFACが新設する制裁コンプライアンス・プログラムと罰則を説明します。

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オリジナルイラスト:左から右へ伸びるレールの上に数枚のコインがあり、中央には錠前の付いた盾の検問所がある。通過したコインはそのまま右へ進み、盾の下からは破線が伸びて、止められた1枚のコインに至る。その隣には警告の三角形がある
画像:Mokaair (© Mokaair)

2026年4月10日、米国の連邦官報に一つの規則案が掲載されました。米財務省傘下の金融犯罪取締ネットワーク(Financial Crimes Enforcement Network、FinCEN)と外国資産管理室(Office of Foreign Assets Control、OFAC)が共同で提案したもので、「認可を受けた決済用ステーブルコイン発行者」(permitted payment stablecoin issuer、PPSI)を、銀行秘密法(Bank Secrecy Act、BSA)に基づくマネー・ローンダリング対策(AML)と制裁コンプライアンスの規律の対象に加えようとしています。引用表記は91 FR 18582、案件番号(Docket No.)はFINCEN-2026-0100、規制識別番号(RIN)は1506-AB73です。署名と発表は4月8日、公衆の閲覧に供するための提出は4月9日、掲載と意見募集期間の開始は4月10日です。

本記事は2026年9月17日に確認しました。読んだのは、govinfoにある連邦官報の全文PDF、FinCENのファクトシート、財務省の4月8日付プレスリリース、そして連邦官報が本件の案件番号で文書を一覧する公式の検索です。当サイトは実地の検証を行っておらず、投資や法律の助言も提供しません。以下の要件はいずれも規則案が提案している内容であり、まだ発効していません。文書に書かれていない点は、規則案に書かれていないと記します。

この規則案は何か:二つの機関、一つの提案、三つの部にまたがる条文

提案した二つの機関はどちらも財務省の傘下にあり、これは一つの共同提案です。規則案が手を入れる条文は三か所です。OFACは31 CFR第502部を新設し、FinCENは第1010部を改正して第1033部を新設します。FinCENは31 U.S.C. 5312(a)(2)(Y)の権限を用いて、この種の発行者を銀行秘密法上の金融機関として明文で定義し、同時にマネー・サービス・ビジネス(MSB)の定義から除外する考えです。現在のステーブルコイン発行者は、送金業者(money transmitter)として規制されています。FinCENのファクトシートによれば、規則案はさらに既存の定義を四つ改め、定義を九つ新設します。

根拠法はGENIUS Actで、規則案は同法が2025年7月18日に制定されたと明記しています。状態は提案です。DATES欄に印刷された意見の締切は2026年6月9日で、規則案はいつ最終化されるかを書いておらず、最終規則が公表から12か月後に発効することを提案しているだけです。連邦官報の公式の文書検索をこの案件番号で調べたところ、2026年9月17日の時点で返ってきたのはこの提案1件だけで、最終規則は見当たりませんでした。顧客識別プログラム(CIP)は、注111により別の規則制定に委ねられています。

誰が所管し、誰が検査するのか:FinCEN、OFACと四つの健全性監督当局

役割分担としては、FinCENが銀行秘密法上のプログラム、報告、記録を所管し、OFACが制裁コンプライアンス・プログラムを所管します。検査権限は、同じ事業体の安全性と健全性を検査している連邦機関に委任する案です。規則案は、GENIUS Actの下での主要な連邦決済用ステーブルコイン規制当局は通貨監督庁(OCC)、連邦準備制度理事会(FRB)、連邦預金保険公社(FDIC)、全米信用組合管理庁(NCUA)であると述べています。こうした機関の検査を受けない発行者については、内国歳入庁(IRS)が現行の1010.810(b)(8)に基づいて検査することを提案しています。

後者の多くは州レベルで認可された発行者です。規則案が引くGENIUS Actによれば、発行済みで流通している総額が100億ドルを超えない発行者は、一般に、連邦の枠組みと実質的に類似した州レベルの制度にとどまることができ、この基準を超えると連邦の枠組みに移行するか、免除を得る必要があります。規則案は別に執行方針も示しています。プログラムの実施に重大な、または全般にわたる(systemic)不備があった場合を除き、提案されている1033.210(b)に基づいてプログラムを整備した発行者は、提案されている1033.210についてFinCENの執行措置を受けないというものです。ただし規則案は、この執行上の要件は銀行秘密法の下での刑事責任に影響しないと述べています。

FinCENとOFACの共同規則案(91 FR 18582)に基づいて整理し、2026年9月17日に確認しました。内国歳入庁の行が現行の条文であるのを除き、表中の項目はいずれも規則案の提案であり、まだ発効していません。
項目規則案が担当とする機関根拠
AMLプログラム、疑わしい取引の報告FinCEN提案中の31 CFR 1033
制裁コンプライアンス・プログラムOFAC提案中の31 CFR 502
連邦の監督を受ける発行者の検査OCC、FRB、FDIC、NCUA提案中の1010.810(b)
それ以外の発行者の検査内国歳入庁(IRS)現行の1010.810(b)(8)
顧客識別プログラム(CIP)別の規則制定本件の注111

マネー・ローンダリング対策プログラム:提案条文が番号を振る四つの要件

提案されている1033.210は、「有効」であることを二つに分けています。(b)に基づいてプログラムを整備することと、(c)に基づいてすべての重要な点でそれを実施することです。第一の要件は、リスクベースの内部方針、手続および統制です。リスク評価は事業活動のリスクを対象とし、マネー・ローンダリング対策およびテロ資金供与対策(AML/CFT)の優先事項を検討して適切な場合には取り込み、リスクが著しく変化したことを発行者が知ったとき、または知る理由があるときには速やかに更新しなければなりません。次にリスクの低減で、規則案が例として挙げるのは、より低リスクの顧客や活動ではなく、より高リスクの顧客と活動に、より多くの注意と資源を振り向けるやり方です。三つ目は継続的な顧客管理(カスタマー・デュー・ディリジェンス、CDD)です。

第二の要件は独立したテストです。条文が書いているのは、発行者自身の職員または外部の者が実施するということで、必ず監査部門を置けということではありません。前文(preamble)はさらに、外部の監査人も内部監査部門も持たない発行者は、テストの対象となる機能に関与していない内部の職員を使うことができると説明しています。第三の要件は責任者の指名です。責任者は米国内に所在し、FinCENが連絡を取ることができてその監督に服し、プログラムの整備と実施、および日常のコンプライアンスの調整と監視に責任を負う者でなければならず、インサイダー取引、横領、サイバー犯罪、マネー・ローンダリング、テロ資金供与または金融詐欺に関わる重罪で有罪判決を受けたことがあってはなりません。第四の要件は、継続的な従業員研修プログラムです。

提案条文では、プログラムは書面でなければならず、取締役会、それと同等の統治機関、または適切な上級管理職の承認を受け、FinCENの求めがあれば写しを提供しなければなりません。さらに、求めに応じて、監督当局に提出したことのある「マネー・ローンダリング対策プログラムを実施済みである」旨の証明書類も提供しなければなりません。

4コマの図解:金融機関として位置付け、マネー・ローンダリング対策プログラム、報告と記録、制裁コンプライアンス
四層の要件:金融機関として位置付け、マネー・ローンダリング対策プログラム、報告と記録、制裁コンプライアンス。出典:FinCENとOFACの共同規則案(91 FR 18582)、確認日2026年9月17日。 · 画像:Mokaair (© Mokaair)

阻止、凍結と適法な命令:セカンダリー市場にまで及ぶ二つの義務

提案されている1033.240の前半は、連邦または州の法令に違反する特定の取引や許容されない取引を阻止、凍結、拒否するための技術的能力、方針および手続を備えるよう発行者に求めています。その対象には、発行者において、または発行者を通じて行われる取引に加え、第三者が行う取引も含まれ、そこには発行者のスマートコントラクトとのやり取りを生じさせる取引も入ります。後半は、適法な命令に従う技術的能力を備えることと、実際に従うことの両方を発行者に求めています。提案されている定義は、適法な命令を、連邦法に基づいて、管轄権を有する裁判所または法定の権限に基づく連邦機関が発した、最終的かつ有効な命令に限っており、しかも三つの要件を同時に満たさなければなりません。発行者が発行したステーブルコインの差押え、凍結、焼却(バーン)、または移転の阻止を求めるものであること、凍結の対象となるステーブルコインまたは口座を合理的な程度に特定して示していること、そして法律の定めにより司法上もしくは行政上の審査または上訴の対象となることです。規則案は、この二つの義務はいずれもセカンダリー市場に適用され、いずれもGENIUS Actが発行者に直接課しているものだと述べています。

規則案は、この能力をどう構築するかを定めておらず、ある取引が違法かどうかを発行者が自ら判断することも求めていません。いつその能力を使うかは、他の連邦または州の法令と裁判所の命令によって決まります。プライマリー市場とセカンダリー市場の区分は、規則案が今回の規則制定のために定めたものです。発行者が利用者または保有者と直接向き合う行為(規則案は発行、償還、焼却などを例に挙げています)はプライマリー市場に当たり、発行者がスマートコントラクトを介する以外には取引の当事者とならない活動はセカンダリー市場に当たります。

提案されている1033.320における疑わしい取引の報告(SAR)の基準額は、関係する金額または合算額が少なくとも5,000ドルの取引です。期限は最初の検知から30暦日以内で、検知の当日に被疑者を特定できなかった場合はさらに30暦日延ばせますが、いかなる場合も最初の検知から60暦日を超えて報告を遅らせることはできません。通貨取引報告(CTR)の基準額は単一の営業日に1万ドルを超える取引ですが、規則案は、ここでいう通貨の定義に決済用ステーブルコインは含まれないと説明しています。3,000ドル以上の資金移転に関する記録保存規則とトラベル・ルールも同様に適用されます。一方でFinCENは、セカンダリー市場の監視をマネー・ローンダリング対策プログラムに組み込むことも、セカンダリー市場の取引について疑わしい取引の報告を行うことも、求める提案はしていません。

制裁コンプライアンス・プログラムと、規則案自身がまだ整理しきれていない箇所

OFACが新設する第502部は、制裁コンプライアンス・プログラムの五つの最低要素を定めようとしています。上級管理職と組織のコミットメント、リスク評価、内部統制、テストと監査、そして研修です。内部統制はリスクベースで、プライマリー市場かセカンダリー市場かを問わずステーブルコインに関連するすべての活動に適用されなければならず、制裁によって禁止されている、または禁止されうる活動を特定し、制裁に違反する、または違反することになる活動を該当する範囲で阻止または拒否し、定めに従ってOFACに報告し、記録を保存できるものでなければなりません。規則案は、制裁スクリーニングには少なくとも、OFACの特別指定国民(SDN)リストに掲載されたデジタル通貨アドレスに関連する取引を特定して阻止するのに十分なツールを含めるべきだと述べていますが、特定のツールやソフトウェアは指定していません。

罰則は提案されている502.401にあります。有効な制裁コンプライアンス・プログラムを維持する義務に重大に違反した者には、違反が続く1日ごとに10万ドル以下の民事制裁金が科されます。それと知りながら(規則案は、実際に知っていた、または知っているべきであったことと定義しています)違反した者には、さらに1日ごとに10万ドル以下が別途科されます。規則案は、これがGENIUS Actの罰則と整合的であると述べ、GENIUS Actの制裁コンプライアンス・プログラムの要件は、連邦法が特定の米国人(U.S. person)に有効な制裁コンプライアンス・プログラムを設けるよう明文で求めた初めての例だとも述べています。これは、機関が自らの法律の新しさについて語った自己評価です。

規則案自身に前後で一致しない箇所がいくつかあり、本記事はそのうち二つを出典のとおりに並べて示します。一つは条番号です。前文は31 CFR 1022.220(a)(2)と書いていますが、提案条文の1010.230(b)(2)が書いているのは1020.220(a)(2)です。もう一つは、前文が、外国の架空銀行(いわゆるシェルバンク)のためのコルレス口座の開設を禁じる1010.630と、外国銀行に対する召喚状に関する1010.670を、この種の発行者に適用するつもりはないと述べているのに、提案条文には1010.630を指す1033.630が残っていることです。このため本記事は、シェルバンクの禁止が適用されるとは断定しません。この規則案が対象とするのは、米国で設立され認可を受けた発行者であって保有者ではなく、文書は台湾にも触れていません。

よくある質問

この規則案は、いま発効しているのですか。

いいえ。ACTION欄に書かれているのは共同の規則案(joint proposed rule)で、意見の締切はDATES欄の記載では2026年6月9日です。規則案はいつ最終化されるかを書いておらず、二つの機関それぞれの最終規則が、最終規則の公表から12か月後に発効することを提案し、この時期について意見を求めているだけです。連邦官報の公式の文書検索を案件番号FINCEN-2026-0100で調べたところ、本記事の確認日である2026年9月17日の時点で返ってきたのは2026年4月10日のこの提案1件だけで、区分は提案規則(Proposed Rule)であり、最終規則は見当たりませんでした。

これは私が持っているステーブルコインに及びますか。

規則案の義務はすべて発行者に課されるもので、保有者に課されるものではなく、文書は一般の利用者が何をすべきかも書いていません。また規則案自身が、GENIUS Actの枠組みがまだ整っていないため、どのステーブルコインが決済用ステーブルコインに当たり、どの発行者が認可を受けた発行者に当たるのかはまだ確定していないと述べており、どの事業者がこの種の発行者になるのかを名指ししていません(文書の脚注には確かに会社名と通貨のティッカーが出てきますが、それは規則案が引用した司法省の没収事件の当事者であって、規則案が発行者と認定したものではありません)。本記事も同様に、名指しも比較もしません。

発行者は本当にステーブルコインを凍結したり焼却したりできるのですか。

規則案は、連邦または州の法令に違反する特定の取引や許容されない取引を阻止、凍結、拒否する技術的能力と、適法な命令に従う技術的能力を備え、実際に従うことを、発行者に求めようとしています。提案されている適法な命令の定義は、三つの要件を同時に満たす必要があります。発行者が発行したステーブルコインの差押え、凍結、焼却、または移転の阻止を求めるものであること、凍結の対象となるステーブルコインまたは口座を合理的な程度に特定して示していること、そして法律の定めにより司法上もしくは行政上の審査または上訴の対象となることです。いつその能力を使うかは、発行者が自分で決めることではありません。規則案は、ある取引が違法かどうかを発行者が自ら判断することを求めず、いつ使うかは他の連邦または州の法令と裁判所の命令によって決まると述べています。FinCENはまた、一部の発行者は現在すでに、スマートコントラクトにプログラムを組み込むことでこうしたことができると述べています。

5,000ドルとは何の基準額ですか。

提案されている疑わしい取引の報告の基準額で、関係する金額または合算額が少なくとも5,000ドルの取引を指します。規則案は、これがステーブルコイン発行者に現在マネー・サービス・ビジネスとして適用されている2,000ドルの基準額より高いと説明しています。理由として挙げられているのは、これが顧客識別プログラムの設置を義務付けられている種類の機関について採用している基準額であること、プライマリー市場では5,000ドル未満の取引が少ないこと、そしてこのエコシステムには送金業者と代理人の関係がないことなどです。なお、通貨取引報告の1万ドルの基準額は、ステーブルコインそのものの取引には及びません。

条番号は結局、1022.220なのですか、1020.220なのですか。

規則案の前文は31 CFR 1022.220(a)(2)と書き、それを銀行の顧客識別プログラム規則だと呼んでいますが、提案条文の1010.230(b)(2)が書いているのは1020.220(a)(2)です。当サイトが確認日に入手した全文で照合したところ、1022.220は1回、1020.220は4回現れました。この二つの回数は当サイトが自分で数えたもので、文書に印刷されている数字ではありません。本記事は二つの書き方をどちらもそのまま記し、出典に代わってどちらかを選ぶことも、自ら訂正することもしません。引用する際は、この食い違いも併せて書いておくことをお勧めします。

この案件の現状を自分で調べるには、どうすればよいですか。

連邦官報のサイトで案件番号FINCEN-2026-0100またはRIN 1506-AB73を検索し、この案件の下に文書がいくつ並んでいるか、区分が提案なのか最終規則なのかを見てください。本記事が使ったのは、連邦官報が案件番号ごとに文書を一覧する公式の検索で、件数と各文書の区分が返ってきます。文書の全文は、米国政府出版局(GPO)のgovinfoサイトにある連邦官報のPDFで読むことができ、最初のページが第18582ページです。FinCENのファクトシートは同じ提案の公式の要約で、全文より読みやすいものですが、細部はやはり全文によってください。

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