ライフスタイル

金融審議会の報告書:暗号資産を金融商品取引法へ移すよう提言、関連法案は成立済み・施行日は見当たらず

2026年2月16日、金融庁は英語サイトで金融審議会「暗号資産制度に関するワーキング・グループ」報告の英語版(仮訳)を公表しました。報告書本体の日付は2025年12月10日です。本稿は金融庁の公表ページ、報告書全文と参考資料をもとに、暗号資産の法的根拠を資金決済法から金融商品取引法へ移すよう提言する理由と、その提言のあとの法案の進み方を整理します。

読了目安 20 分

オリジナルの図:左に大きな円とそれを囲む六つの小さな円を置き、審議会のワーキング・グループを表します。矢印は中央の実線枠の報告書を指し、そこから破線の矢印が右の破線枠の文書に向かいます。右の文書は、成立はしたものの施行日が見当たらない法律を表します。
画像:Mokaair (© Mokaair)

2026年2月16日、金融庁(Financial Services Agency、FSA)は英語サイトで、金融審議会「暗号資産制度に関するワーキング・グループ」報告の英語版(仮訳)を公表しました。本稿が読んでいるのはこの英語版(Provisional Translation)で、用語は金融庁の日本語ページと、2025年12月10日に公表された日本語の報告の表記にあわせています(「暗号資産」など)。公表ページには、ワーキング・グループが報告書を取りまとめて公表したこと、座長が上智大学法学部教授の森下哲朗氏(英語ページの表記は MORISHITA Tetsuo)であることが書かれています。英語版の表紙には Provisional Translation と、報告書本体の日付である2025年12月10日が印刷されています。

本稿の事実確認日は2026年9月17日です。読んだのはこの英語の公表ページ、報告書全文の英語版(62ページ)、報告書の参考資料(6ページ)、そして金融庁日本語サイトの「国会提出法案等」ページです。公表ページには確認日の時点で Updated on August 3, 2026 とも記されており、報告書全文のファイルについてサーバーが返す最終更新時刻も同じ日でした。当サイトは実地の検証を行っておらず、投資や法律に関する助言も提供しません。

この報告書は誰が書いたのか:三つの日付を混ぜない

金融審議会は金融庁の審議会です。報告書の「はじめに」の節には、この流れが書かれています。金融庁は暗号資産に関連する制度のあり方等について検証を行い、2025年4月10日にその結果をディスカッション・ペーパーとして公表しました。2025年6月25日、第55回金融審議会総会・第43回金融分科会合同会合で、金融担当大臣が審議会に対し、利用者保護とイノベーション促進の双方に配意しつつ、暗号資産を巡る制度のあり方について検討を行うよう諮問しました。審議会はこれを受けてこのワーキング・グループを設置し、報告書は2025年7月から六回の会合を開いたと書いています。

三つの日付は分けて覚える必要があります。報告書本体は2025年12月10日で、英語の公表ページ自身が日本語版はこの日に公表されたと書いています。英語版が公表された日は2026年2月16日で、当サイトがこの記事のURLに付けている出来事の日付もこの日です。公表ページに別に記されている2026年8月3日は、この英語ページの更新日です。

報告書の性質もはっきりさせておきます。これはワーキング・グループの提言であり、法律でも内閣府令でもありません。以下に出てくる「べき」や「求める」はすべて報告書が提言する方向です。報告書は「おわりに」の節で自ら射程を限っています。今回の検討は主に国内の暗号資産交換業者(英語版の略称はCASP)を通じた取引を対象としており、世界の暗号資産取引の一部しか対象としていない、と書いています。

なぜ変えるのか:報告書が挙げる五つの喫緊の課題

報告書はまず既存の枠組みを振り返ります。2016年、日本はマネー・ローンダリングとテロ資金供与の防止を強化する国際的な要請に応えるため、また交換業者の一社が破綻したことを受けて、資金決済に関する法律(資金決済法)と関係法律を改正し、登録制と利用者保護の枠組みを導入しました。2019年の改正は原則として利用者の暗号資産をコールドウォレットで管理することを交換業者に求めるもので、2022年に改正されたのは犯罪による収益の移転防止に関する法律で、いわゆるトラベルルールが導入されました。

変える理由は、利用者がすでに投資の対象として扱っているからです。報告書が引用している数字は次のとおりです。国内の交換業者の口座開設数は1,300万口座を超え(2025年10月時点)、個人口座の八割以上が預かり資産10万円未満です。投資経験者のうち暗号資産を保有している割合は7.3%で、これは金融庁の2024年7月5日の調査によるものです。保有する最も大きな理由(86.6%)は長期的な価格上昇への期待で、この数字の脚注は報告書が挙げる業界団体の調査を指しており、金融庁の統計ではありません。

もう一方は相談と苦情です。報告書は、金融庁の金融サービス利用者相談室が暗号資産に関する問い合わせと苦情を月平均で350件以上受け付けており、その多くが詐欺的な投資勧誘や取引に関するものだと書いています。報告書はこれを踏まえて五つの喫緊の課題を挙げます。情報提供の充実、適正な取引の確保と無登録業者への対応、投資運用等に係る不適切行為への対応、価格形成・取引の公正性の確保、そしてセキュリティの確保です。報告書は、規制を見直すことは暗号資産投資についてお墨付きを与えるものではない、とも自ら述べています。報告書の中心的な提言は法的根拠の移行です。暗号資産の法的根拠を資金決済法から金融商品取引法へ移し、有価証券とは異なる規制対象の商品として位置づけ、規制の重複を避けるために資金決済法の暗号資産に関する規定を削除する、という内容です。業者規制については、暗号資産の売買を行う業者を原則として第一種金融商品取引業と同等の規制の対象とするよう提言しています。インサイダー取引規制の対象は、国内の交換業者で取扱いが開始された、または取扱いを申請中の暗号資産で、取引の場所を問いません。

2026年9月17日に確認。報告書の参考資料の同日のオンライン版にある対照表をもとに整理しました。「—」はこの表が現行の欄に印刷している「-」です。右の欄は報告書が提言する方向で、すでに効力を持つ規定ではありません。
項目現行報告書が提言する方向
最低資本金1,000万円5,000万円
禁止行為自主規制法令へ引き上げ
責任準備金—新設
無登録営業の罰則3年以下の拘禁刑5年以下の拘禁刑
無登録勧誘の罰則—1年以下の拘禁刑
認定自主規制機関日本暗号資産等取引業協会(JVCEA)同協会(組織体制の強化が必要)

一般の利用者に見える三つのこと

一つ目は、取扱いを始める前の情報提供です。報告書は三つの場合に分けて提言しています。発行者が募集により資金を調達して暗号資産を販売する場合は、発行者が作成して公表し、取り扱う業者もその情報を公表します。発行者が資金調達を行わないものを業者が取り扱う場合と、発行者を特定できないものについては、業者が自ら作成して公表します。情報提供の内容には、暗号資産の特性と機能、発行総量、基盤となる技術、暗号資産に付随する権利義務と関連するリスクが含まれ、発行者を特定できる場合はこれに発行者に関する情報、調達した資金の使途の予定、プロジェクトの内容が加わります。除外されるのは、私募に相当する勧誘(49人以下への勧誘、または適格機関投資家のみへの勧誘で、転売制限が課されるもの)、無償の交付、そしてマイニングやステーキングの報酬として自動的に生じる交付です。

二つ目は、送付の前の注意喚起です。報告書は、利用者が暗号資産をアンホステッド・ウォレット(unhosted wallet)や無登録業者のウォレットへ送付する際に詐欺のリスクを警告して送付の目的を確認すること、適切な取引モニタリングを行うこと、そして口座開設の直後と新たに指定したウォレットへの送付の前に一定の熟慮期間(英語版の表現は cooling-off period or other deliberation period)を設けることを、法令で交換業者に求めるよう提言しています。報告書はこの期間の長さを書いていません。三つ目は無登録業者に出会った場合です。報告書は、裁判所が緊急差止命令を発することができるようにし、証券取引等監視委員会(SESC)にその申立ての権限と、そのための調査権限を与えること、さらに、こうした売買契約を一定の場合に無効とみなすことができる民事の規定を設けることを検討するよう提言しています。

以下は編集部が作成した例で、実地の検証ではありません。日本のプラットフォームで、聞いたことのないトークンが取扱い予定になっているのを見かけたとします。いま読めるものはたいていプロジェクト自身のホワイトペーパーだけですが、報告書はホワイトペーパーに説明が不明確なものや、実際のコードと一致しないものが多いと指摘しています。報告書が提言する制度のもとでは、発行者または業者が取扱いを始める前に上の項目を公表することになり、虚偽記載や情報の不提供には刑事責任、民事の賠償責任と課徴金が伴います。

四つの枠の図解:法的根拠の移行、取扱いを始める前の情報提供、取扱い済みと申請中を対象とするインサイダー取引規制、そして分散型取引所は未確立
報告書が提言する四つの方向:法的根拠を資金決済法から金融商品取引法へ移すこと、取扱いを始める前に情報を公表すること、インサイダー取引規制が取扱い済みと取扱い申請中の暗号資産を対象とすること、そして分散型取引所の規制の在り方が確立していないことです。 · 画像:Mokaair (© Mokaair)

報告書があえて答えを出していないところ

分散型取引所(DEX)が最もはっきりしています。報告書は明確な規制の在り方が確立していないと書き、現在の交換業者に対する規制とは異なる、技術的性質に合わせた過不足のない規制のあり方について、各国の規制やその運用動向も注視しながら継続して検討を行うことが適当だとしています。当面の措置は一つだけです。DEXや日本で登録していない業者を通じた取引は予見できない損失を負う可能性があることを、政府と登録業者が利用者に十分に周知すべきだ、というものです。数字も出ていません。発行者が監査法人の財務監査を受けずに広く一般の投資者から資金を調達する場合、報告書は株式投資型クラウドファンディングに準じた投資上限を設けることを提言していますが、暗号資産についての金額は書かれていません。責任準備金も「適切な水準」とだけ書かれています。

銀行と保険会社は二層に分かれます。銀行や保険会社自身が暗号資産を発行し、売買することは引き続き慎重な検討が必要で、理由にはマネー・ローンダリング、暗号資産を管理するシステムのリスク、価格変動のリスクとリスクが現実化したときのレピュテーション・リスク、さらに「銀行が売っているから」という理由でリスクを十分に評価しないまま取引する顧客がいる可能性が挙げられています。自ら投資運用業を行うことは禁止を維持すべきだとしています。ただし、適切なリスク管理とガバナンスの枠組みが備わっていることを前提に、自己の投資目的で暗号資産を保有することは認めてもよいのではないか、と報告書は述べています。

報告書のあと:関連法案が2026年に提出され成立

金融庁日本語サイトの「国会提出法案等」ページでは、第221回国会の区分に『金融商品取引法及び資金決済に関する法律の一部を改正する法律』が挙げられ、その下の行に「(令和8年4月10日提出、令和8年7月15日成立)」と括弧付きで記されています。令和8年(2026年)4月10日提出、同年7月15日成立という意味です。同ページは、この法律が「暗号資産」、「サステナビリティ情報の開示・保証」、「スタートアップへの資金供給」、「不公正取引規制」などに関する制度を整備するものだと説明しています。

「成立」は「施行」ではありません。本稿が引いた金融庁の四つのページで2026年9月17日に確認した限り、暗号資産に関する規定の施行日は見当たらず、最終的な条文と報告書の提言を条文ごとに対照したものも見当たりません。そのため本稿は公布日、法律番号、施行の年月を書きません。報告書に書かれている罰則の水準も同じく提言です。脚注には、現行の資金決済法のもとで無登録で暗号資産交換業を行うことは3年以下の拘禁刑、300万円以下の罰金またはその併科であり、金融商品取引法のもとで無登録で金融商品取引業を行うことは5年以下、500万円以下だと書かれています。さらに上限を10年に引き上げるべきだという意見もあったとされていますが、それは報告書が記録した議論であり、最終的な立法の結果ではありません。

台湾の読者にとっての使い道は二つあります。一つは状態を分けることです。報告書は提言、関連法案は成立済み、施行日はこの四つの公式ページにはまだ現れていません。「日本はもう法律を変えた」という言い方を見かけたら、それがどの段階の話なのかをまず尋ねることができます。もう一つは確認の方法です。報告書の三つのファイルはいずれも金融庁の英語の公表ページに掛かっており、法案の日付は日本語の「国会提出法案等」ページにあります。台湾自身の規定と時期については当サイトに別の記事があり、本稿は二つの法域の比較を行いません。

よくある質問

日本で暗号資産を売買するルールはもう変わったのですか。

本稿が書いているのは審議会のワーキング・グループによる提言の報告書で、すでに効力を持つ法律ではありません。金融庁の「国会提出法案等」ページには、関連法案が令和8年(2026年)4月10日に提出され、同年7月15日に成立したと書かれていますが、成立は施行ではありません。本稿が引いた金融庁の四つのページで2026年9月17日に確認した限り、暗号資産に関する規定の施行日は見当たりません。

この件の三つの日付はそれぞれ何ですか。

報告書本体の日付は2025年12月10日で、英語の公表ページには日本語版がこの日に公表されたと書かれています。英語版が英語サイトで公表された日は2026年2月16日です。公表ページに別に記されている2026年8月3日はこの英語ページの更新日で、報告書全文のファイルについてサーバーが返す最終更新時刻も同じ日です。三つの日付は三つの別のことを指しています。

非代替性トークンやステーブルコインも対象に入るのですか。

報告書は現行の暗号資産の定義をそのまま用いることを提言しています。資金決済法上の暗号資産に当たらないいわゆるNFTについては、実務上は商品やサービスの提供を伴うことが多く性質の違いも大きいため、一律に金融規制の対象とするかは慎重に考える必要があるとしています。いわゆるステーブルコイン(デジタルマネー類似型)は法定通貨の価値と連動した価格で発行され、発行価格と同額での償還を約するもの(およびこれに準ずるもの)で、報告書は投資対象として売買されることは現時点では想定しにくいと書いており、現行は資金決済法のもとで電子決済手段として規制されています。

金融商品取引法へ移すことは、暗号資産投資に公的なお墨付きを与えることになりませんか。

報告書自身がその解釈を否定しています。「規制見直しの趣旨」の節には、規制を見直すことは暗号資産投資についてお墨付きを与えるものではないと明記されています。報告書の前提は、利用者がリスクと商品の特性を十分に理解した上で合理的な取引の判断を行い、自ら負担できるリスクの範囲内で取引することです。報告書は同時に、過去の実績や将来の予測を過度に強調するなどして正しいリスク認識を妨げたり、投機的な取引を助長したりする表示を、交換業者に禁止するよう提言しています。

台湾から日本のプラットフォームを使っています。この報告書は関係しますか。

報告書は、今回の検討が主に国内の暗号資産交換業者を通じた取引を対象としていると書き、世界の暗号資産取引の一部しか対象としていないと自ら説明しています。国外の利用者が自分の口座でこうした変化を目にするのがいつになるかは書かれていません。一般の利用者に比較的関係があるのは次の一文です。分散型取引所や日本で登録していない業者を通じた取引は予見できない損失を負う可能性があることを、政府と登録業者が利用者に十分に周知すべきだ、という部分です。

現状を自分で公式ページで確認するにはどうすればよいですか。

金融庁の英語サイトのこの公表ページには三つのファイルが掛かっています。報告書全文の英語版、報告書の概要、参考資料です。ページには公表日と更新日も印刷されています。そのあとの立法の進み方は、金融庁日本語サイトの「国会提出法案等」ページにあります。同ページは国会の回次ごとに法案の名称、提出と成立の日付、さらに概要や法律案要綱などの附属文書を挙げています。

最新の旅の情報・ガイド

出典

ライフスタイル